キャリコンから就職活動を頑張る学生の皆さんへ
はじめに
これからお話しするのは、学生たちが自身の就職活動の中で得た気付きや学びをまとめたものです。彼らがキャリアコンサルタントの私に面談の中で話してくれたそれらの話を、私は本当に努力した人にしか言えない素晴らしい金言だと感じました。それらは決して誰かの受け売りや書籍からの引用ではなく、自分自身が就職活動の中から得たその人だけのひとつの「答え」です。
そして、本人にとってこのような『答え』というのは、これからの人生で数々迎える転機の際に、自分を強くしてくれる魔法の言葉になります。
社会人をやっていれば、人は必ず苦労や挫折を経験します。仕事の際に嫌な思いをすることもあれば、乗り越えられないような難題に打ちのめされることもあります。そんな時に立ち向かう力を与えてくれるものの一つに、かつての自分自身が成し遂げたサクセスストーリーがあります。
そこで、私は就職活動中の学生の皆さんに、『就職活動は社会人として取り組んでいる最初の仕事』と捉えていただきたいと考えています。一生に一度、初めて社会への入り口に立つ貴重な経験です。限られたこの時間を精一杯努力することで。自分自身の力で結果を出し、その結果(実績)を自信に換えて社会人になってほしい。
いつか果たした過去の成功体験は、今も、そしてこれからも、ここ一番という時に自分を奮い立たせてくれるはずです。そして、私はその一つに、「就職活動における内定獲得」という実績も加えて欲しいと思っています。
一言で内定と言ってもいろいろあります。一生懸命頑張って内定を手にした人。そして、なんとなく頑張らなかったけれど幸いにも内定をもらった人。あるいはコネで楽に内定を獲得した人とでは社会人になってから明確な差が生じます。いざという時に踏ん張れるのは頑張った経験を持つ人です。それは当然のことです。
これからとりあげる話の多くは、真剣に悩んだ人、心から苦しんだ人たちが実際に体験したものです。そして、彼らはその体験を通して、何らかのキッカケで納得のいく答えを見つけて自分自身で進路を定めています。
そんな人たちの言葉ですから必ず得るものがあるはずです。
ぜひ、ご自身の就職活動の参考にしてみてください!
【第1章】職業選択・出会いによって進路を決めたケース
私が「少しでも良いから、先に企業と出会うことから始めた方が良い」と勧めるワケ
キャリアコンサルタントが就活生との相談を行うときに、相談者に『自己理解』と『仕事理解』に取り組むことから勧めるケースが多いと思います。しかし私は学生に対して「少しでも良いから、先に企業と出会うことから始めた方が良い」と勧めています。それはなぜか?
それは、就活生の話を聞くと、『進路を決めるにあたり就職活動の過程で良い出会いをして方向転換した』と言う人が多いからです。キャリアコンサルタントとして相談業務に従事しているとこうした報告をたくさん受ける。私自身の感覚的なもので申し訳ないですが、全体の8割を超えているような気がします。
彼らはどういう経緯でそうなったのでしょうか?
『希望していた業界と異なる業界に進むことになった人』にもっと詳しく理由を訊ねみました。
『どういう理由で就職を決めたのか?』
『職業決定の決め手は何だったのか?』
すると彼らの回答は概ね共通していました。話を聞いて(職場を見て)ここならきっと得るものがあると感じたから全く違う分野に進んだ、とのことでした。
『当初と考えが変わった』ということは、就職活動に限らず、多くの経験や出会いを経てよくある話です。就職活動で『当初と考えが変わった」ということは、決して自分自身が優柔不断だったり、決意や覚悟が足りなかったわけではないと思います。むしろ無知ゆえに盲目的に考えていたのが、多くの出会いを経験するうちに視野が広がり、考え方が変わったということなのです。
視野が広がると結果として選択肢が増えます。そのような背景で進路(選択)が変わったのです。これは学生自身が就職活動を通して一回り成長した証なのです。
人の成長とは経験や出会いから多くの気づきと学びを得ることです。失敗を糧やバネにして次に繋げ、多くの出来事に感動して希望を持ち、挑み続けることは、人が成長を継続することだと思います。
そのようにして内定を獲得した事実は、紛れもなく自分自身の努力を経て勝ち取った『実績』であり、それは、自身の今後の人生において自信と誇りにして欲しいサクセスストーリーなのです。
そこで、この章では出会いによって進路を決めた事例をいくつかご紹介したいと思います。それらの事実を読めば、少しでも早く、まず先に企業と出会い、その後から『自己理解』と『仕事理解』に取り組んでも遅くはないことを理解できるはずです。(というか、企業の話をたくさん聞いているうちに自然と『自己理解』と『仕事理解』は深まってくるので、思うところを書き出して整理すれば良いです)
◇就職活動は足を使うことが大切!
合同企業説明会等のイベントには欠かさず出席し、多くの人事の方や企業の方々の話を聞いた。1社でも多くの企業と『出会う』ことが大事。運命の出会いはきっとある!
◇行き詰った時には視点を変えてみよう
今、見ているものより多くのものが見たいと思ったら、より高いところに上がらなくてはならない。もう一段上がれば視野を拡げ、選択肢を増やすことができる。それが成長である。
◇大切なのは早く決めることではなく、決めた何かを信じること
企業研究にも会社説明会へも気持ちは消極的だった。周囲に言われて仕方なく赴いた先に怠け者の自分を変える不思議な発見があった。
◇出会いの先に希望を見つけることがある
自分の中で何が重要かを考えれば、『早く決めよう』などという雑な気持ちにならない。『これからしっかり歩める道であるか?』、『頑張れる環境であるか?』を見定めること。
◇『働くこととは何か?』と向き合った
社会人になると生活の大部分が仕事になる。そのため、収入を得るための手段として仕事を選ぶのか?または人生の目標となるような仕事を選ぶのか?自分は後者だった。
◇就活を通じて夢を持つことの重要さを知った
『なんとなくサラリーマン、とりあえずOL』といった気持ちで就職活動に取り組んでも成果は上がらない。企業から求められる人材は明確な目標や未来予想図を持っている人である。
◇想いの強さは行動に現れる
どんなに格好の良い言葉を並べても、行動で示した人間には敵わない。就活では雄弁な人物が有利なわけではない。不器用でも本気を示せる者が勝つ。
第1章のまとめ
これまでの事例を読んで、就活生の進路の決め手となっているのは希望と成長、または可能性とやりがいであることがわかります。就職活動の過程でそれらを感じる良縁に巡り合えた人が自分の活動に自信を持って進路決定しているからです。
そして良い出会いをした人はその相手から必ず何かを得るようになっている。また、『人から何かを得る』こともその人の持つ能力(長所)の一つと言えます。
現に本章では就職活動を通じて『この会社なら何か見つかるかもしれない』、『この人から得るものや学ぶことは多そうだ』と思える出会いが決定打となった事例ばかりでした。中には衝動的・短絡的に感じる話もありましたが、報告に来た時の彼らの笑顔を見れば、本人にしかわからない信頼できる感覚(確信)があったのが見て取れました。
キャリアコンサルティングのインテーク面接では就職活動について「何から手を付けたら良いのかわからない」という相談が多いです。これは勉強で言うところの「何がわからないのかわからない」と同義でしょう。
そういう人はまず先に企業と出会い、そこでどんな印象や感想を持ったかを検証するのが良いです。そしてそれに基づいて自己理解と仕事理解を深めていくのがずっと効率的です。よくわからない状態でそれらに取り組んだとしても、どうせ遠回りして遅れが生じます。
だから就活解禁前に自己理解と仕事理解に取り組まないと遅い、ということは決してありません。出会ってからでも十分間に合います。むしろ企業と出会うことがそのまま自己理解や仕事理解になります。それはこれまでのエピソードを読めば理解できたと思います。
もちろん就職活動に取り組む前に予め自分の適性や関心事に基づいて向き不向きややりたいこととやりたくないことを取捨選択するのは大切なことだと思います。しかし、事前にそれらに取り組んだとしても、それによって盲目的に陥る危険もあるため、その時点ではあくまでも職業決定の際の基準の一つと捉えておく方が望ましいです。
なぜなら多くの人は当初、単に企業イメージが先行しただけだったり、企業の規模や知名度で値踏みしてしまうことが多いからです。しかしながら、これでは正しい自己理解も仕事理解もできません。それらの考えや想いが公正な見立ての妨げとなっているためです。
そこに気づき軌道修正した結果、方針変更して、自分の望む選択のための大きな一歩を踏み出すことになります。
本章の学生たちは実際に企業側の話を聞いて知らないことの方が多かったことに気づきました。そして就職活動に臨む姿勢や認識を改める必要を感じたのです。さらにそこから改めて自己理解と仕事理解に取り組み、それらをより洗練するために多くの出会いを求めました。そして実力で内定を勝ち取り、自分にとってベストの選択をしました。
このことは特別な人間にしかできないことではなく、誰にでもできることです。
※2024年卒業生の意識はどうか?
参考情報(外部サイト)
マイナビ 2024年卒大学生活動実態調査 (3月1日)
株式会社マイナビが毎年行っている就活生の意識調査
【執筆者】
キャリアコンサルタント(国家資格)
(2級キャリアコンサルティング技能士)
久保 知博
<運営会社>
